私たちの脳には、新しいことを学んだり、失われた機能を補ったりする能力があります。この性質を「脳の可塑性」と呼びます。脳卒中やケガで手指の麻痺を抱えている方にとって、この脳の可塑性はリハビリの鍵となる概念です。

最近では、「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」という技術が注目を集めています。この技術を活用すると、脳の神経回路の再構築を促し、麻痺した手指の回復を支援できる可能性があるのです。実際に、BMIを使ったリハビリが進められており、その効果も徐々に明らかになっています。

本記事では、「脳の可塑性とは何か?」という基本的な部分から、最新のリハビリ技術であるブレイン・マシン・インターフェースの可能性について詳しく解説していきます。

1. 脳の可塑性とは?

1-1. 脳の可塑性の基本概念

脳の可塑性とは、脳が環境や経験に応じて神経ネットワークを再構築する能力を指します。神経細胞(ニューロン)は情報を伝達する役割を担っており、そのつながり(シナプス)が強化されたり、新たに形成されたりすることで、学習や記憶、運動機能の回復が可能となります。この仕組みは、日常の学習やトレーニングだけでなく、リハビリにおいても極めて重要です。

1-2. 脳の可塑性とリハビリの関係

脳卒中や神経障害によって一度失われた機能も、脳の可塑性を活用することで回復が期待できます。このプロセスを「機能代償」と呼びます。麻痺した手指の運動を繰り返し試みることで、脳がその動きを学習し、徐々に回復することが可能になります。
例えば、手術によって脳の半分近くを切除しても、リハビリによって数年後には日常生活の多くの活動が行えるほどに回復することがあります。

これは、脳の可塑性という性質によって、残った半分の脳が機能を肩代わりすることによって実現された働きです。
しかし、リハビリには多くの努力が必要であり、神経が繋がらず、動かないものは動かないと諦めてしまう方もいます。
私たちLIFESCAPESは、自分ひとりでは「脳の中の機能代償経路を利用して運動をする」という経験ができないのであれば、技術を使ってそれを実現し、脳の中に機能代償経路を作り出そうという発想を進めました。

2. ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)とは

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)とは、脳の信号を解析し、外部デバイスに接続する技術です。この技術を活用することで、脳が発する信号を読み取り、動作の指令として利用することが可能になります。例えば、脳卒中後に手指の運動が難しくなった場合でも、BMIを利用することで、意図した動作を補助することができます。

こうして自力では動かせない手指を、「動かせた」と錯覚させることで、脳の可塑性による回復を促す技術です。
BMIを活用したリハビリでは、以下のような技術が取り入れられています。

  • 脳波計測とリアルタイムフィードバック: 脳波を測定し、患者の意図した動作に応じたフィードバックを提供する。
  • 神経筋電気刺激(NMES)との併用: 筋肉に電気刺激を与え、実際の動きをサポートすることで、脳と身体のつながりを強化。

近年、BMIを利用したリハビリは急速に進化しており、さまざまな臨床試験で有望な結果が報告されています。例えば、BMIを活用したリハビリを受けた患者の中には、手指の動作回復率が向上したケースもあります。

BMIによって、常識をかえる

BMIにより、いままではリハビリの成果がなかなか出ず、手指の機能の回復ではなく日常生活を快適に過ごせるように別のリハビリに移るといった状況だったものが、脳卒中発症から6カ月以上経過した後でも機能回復が可能になることは多くの研究で報告されています。

まとめ

脳の可塑性は、リハビリテーションにおいて重要な役割を果たします。ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を活用することで、神経ネットワークの再構築を促し、麻痺した手指の回復を支援することが可能になります。
LIFESCAPESは、最新技術を活用したリハビリを推進し、在宅リハビリや医療機関との連携を強化することで、より多くの患者が効果的な治療を受けられる未来を目指しています。今後もBMI技術の発展とともに、リハビリテーションの可能性はさらに広がっていくでしょう。