「脳と脊髄リハビリ研究センター福岡」は、脳卒中後や脊髄損傷後などに生じる後遺症に対するリハビリに特化した施設として、2020年4月、福岡県福岡市で開設しました。

YouTubeやInstagramなど、SNSでの情報発信にも注力しており、日々、世界各国からの問い合わせが届いているといいます。

今回は、同センターを立ち上げ、代表を務める理学療法士の金田 洋一先生に、LIFESCAPES BMIの活用方法や効果について、話を伺いました。

「本当に何もできない」という無力感が「脳卒中に人生をかけよう」と決断した原点

どのような想いから、「脳と脊髄リハビリ研究センター福岡」を立ち上げられたのですか?

金田先生:私はもともと「痛み」、特に「慢性疼痛」の研究がしたいと考えていました。
大学も就職先も、慢性疼痛の権威がいるという理由で選んだくらいです。

しかし、就職後に配属されたのは「脳血管疾患等リハビリテーション料」でした。
当時「運動器リハビリテーション料」とは分かれていたので、私は運動器リハの患者様には関われない状態でした。

配属後、2週間ほど経った頃のことです。
まだ新人で、単独では何もできないため、プリセプター制度で先輩について病棟の患者様を訪れていたのですが、先輩がナースステーションに呼ばれ、患者様と2人きりになりました。

その時、患者様に「何でもするから、私のこの手をもう一度、動かせるようにできませんか?」と聞かれたんです。

当時の私も、新人とはいえ、実習は経験していたので、患者様に期待を持たせ過ぎてはいけないことは、なんとなくわかっていました。
「絶対に良くなりますよ」「麻痺が改善しますよ」といったことは言ってはいけないと思い、喉元まで言葉が出かかったものの、「そうですよね」と気持ちに同調するにとどまりました。

「本当に何もできない」という無力感を感じたのは、あの時が人生で初めてでしたね。
その時に、それまで描いていた「スポーツ選手の専属セラピストになりたい」「慢性疼痛を追究したい」という夢の代わりに「脳卒中に人生をかけよう」という考えに変わったんです。

強烈な原体験があったんですね。

金田先生:ええ。大学院を変更したのも、それが理由ですね。
そこから、回復期リハビリテーション(以下、回リハ)に重点的に携わるようになったのですが、

そこで悩ましいと感じたのが、回リハの目標が、「麻痺の質を改善させる」というより「退院」であることです。
そのため、とにかく自立度を上げていくことが重視されます。
また、実施したいリハビリと診療報酬との兼ね合いにフラストレーションを感じることもありました。

そこで、麻痺を改善させるリハビリだったら、やはり慢性期でのリハビリテーションしかないと考えるようになりました。

自費リハを視野に入れ、実際に脳卒中のリハビリを行う施設などに見学に行ってみると、金額が信じられないほど高額なのです。
そこで、リーズナブルな価格で慢性期リハビリが受けられる環境を整えようと当センターを立ち上げ、現在に至ります。

BMIを通して患者様自身で脳の活動を確認することで、モチベーションにつながる

実際にBMIを使用したリハビリを行ってみて、従来のアプローチと比べてどのように感じられましたか?

金田先生:患者様の反応がすごく良かったというのが大きな違いです。
脳卒中リハビリで一番重要なコンセプトが、抽象的に言うと「脳を治すことである」と考えた時に、従来のリハビリだと脳の中までは見えません。
ですから、実際に運動が起きないと回復しているかどうかがわからないのです。
これが、患者様にとっては「こんなに頑張っているのに、まだ動かない」と、モチベーション低下の原因につながっていました。

BMIの良いところは、脳活動レベルで可視化できる点です。
運動イメージをすると波形がバーッと上がるのを見て、患者様が「私の損傷側の脳で活動が起きているんだ」と実感できます。
そこで、「このリハビリを続ける意味があるのだ」と実感でき、運動イメージ療法を頑張ってくれるようになる、といったケースが見られます。
麻痺のリハビリは、一見すると地味なため、毎日、続けるハードルが高いんですよ。

LIFESCAPES BMIを60施行、1日行ったら、手指の伸展が見られた

BMIを使ったリハビリに対する患者の反応で印象に残っているエピソードはありますか?

金田先生:筋緊張で手指が握り込んでしまっている30代前半の女性の患者様が、「ネイルを楽しみたい」という希望を持っていらっしゃいました。
でも、ネイルを塗る間は、手をひらいておかなければなりません。

そこで、LIFESCAPES BMIを60施行、1日行ったら、その後、指をひろげてテーブルに置けるようになったんです。
やはり、運動イメージを継続できると、実際に動きやすくなるのだと改めて感じました。
特にイメージするのが上手な患者様だったので、効果が出やすかったのだと考えています。

どういった症状の患者様に、BMIを活用していますか?

金田先生:重度で痙縮が強く、随意運動ができない方に使うことが多いです。
随意運動がほぼできない状態なので、課題指向型訓練をしようとしても、できないケースが多いんです。
ですので、まずは脳活動レベルで鮮明にイメージづくりができているかどうかを判断するために使うことが多いですね。
また、「LIFESCAPES BMI」を使用する際は、最低でも週に2回以上、来ていただいて確認しています。

中等度や、多少の動きが出ている患者様へ利用するケースは、あまりないですか?

金田先生:当センターのスタッフと決めているラインとして、随意収縮介助型電気刺激を行ってみて、運動が補助できて、課題に入っていけそうになれば「LIFESCAPES BMI」を卒業すると決めています。
随意収縮介助型電気刺激を試みても、筋活動がまだ微弱しか出ていない場合は、「LIFESCAPES BMI」を使用しています。

現場で迷わず運用できる

「LIFESCAPES BMI」の技術的な操作や運用において不安や難しさはありましたか?

金田先生:慣れたら、難しさは全くありません。
最初の2~3回目くらいまでは、プラグを付ける順番に迷うこともありましたが、慣れれば5~10分程度で装着できるようになりました。

当センターでは、三段ラックに「LIFESCAPES BMI」を収納しているのですが、使用する際に三段ラックを引っ張ってきて、ヘッドセットを付けてジェルを塗るだけなので、簡単に準備できます。

使用中の患者様への声がけや、脳波の解析については、コツなどは必要だと感じますか?

金田先生:そうですね。
ただ、そこは、LIFESCAPESのサポートの方に相談できるので、問題ないと考えています。
私たちはBMIの専門家ではないので、たとえば、見たことのない波形が出たら、写真を撮ってサポートへ送って尋ねています。
返答をいただければ納得できますし、そのやり取りは苦になりません。

店舗を中心としながら、世界中の脳卒中による麻痺の改善をサポートしていきたい

「脳と脊髄リハビリ研究センター福岡」としての展望を教えてください。

金田先生:起業当時に思い描いていたことと、現在では少し変化してきています。
当初は、1店舗だけ構えたら、自分の手の届く範囲で、麻痺のある患者様たちをサポートしたいと考えていたのですが、SNSでの発信活動を続ける中で、世界各国からさまざまなお問い合わせをいただくようになりました。
現在は、オンラインで英国、米国などとつないでリハビリを行ったり、わざわざ県外から泊りでリハビリを受けに来てくださる患者様がいるという状況です。
ですので、店舗で提供するリハビリを中心としながら、世界中の脳卒中による麻痺の改善をサポートしていきたいと考えるようになりました。
これは、必ず実現したいです。

LIFESCAPESへのご要望があれば、お願いします。

金田先生:患者様が自身で扱かえるBMIの開発・販売に力を入れていただきたいですね。
リリースされたら、SNSで宣伝しますよ。

ありがとうございました。

脳と脊髄リハビリ研究センター福岡の各種取り組みについては下記からご確認ください。

脳と脊髄リハビリ研究センター福岡HP
https://noutosekizui.com/