脳の血管が詰まったり破れたりすることで細胞に栄養が届かず、細胞が死んでしまう脳卒中。
治療技術の進歩により死亡率は低下している一方で、日本では患者数が増え続けています。

脳卒中は後遺症によって生活に大きな支障をきたし、重度の要介護状態を招くことも少なくありません。
こうした中、東京都世田谷区・成城学園駅の近くで、脳卒中専門のリハビリに長年取り組んできた自費リハビリ施設があります。保険診療では実現しにくい“本当に効果のあるリハビリ”を提供してきました。

今回は、その施設の代表である針谷 遼先生に、重度患者の新たな選択肢として注目される「LIFESCAPES BMI」を導入した背景や、その効果についてお話を伺いました。

BRAINを設立した背景について、教えてください。

針谷先生:BRAINでは、脳卒中患者さん向けの専門リハビリ施設として、エビデンスに基づくリハビリの提供をポリシーとしてサービス提供をしております。

私自身、もとは病院で勤務していました。
当時は、教科書や参考書を読んだり、先輩に教えてもらったり、院外の著名な先生に話を聞きに行ったり見学させてもらったりするなどして勉強し、日本国内で行われている標準的な脳卒中のリハビリについては、ある程度、把握できていたかと思います。

そんな中、2016年にアジア理学療法学会で発表する機会がありました。
その会場で「世界で議論されていることと、国内で議論されていることは、こんなにも差があるものなのか」と気づかされたのです。

今もそうですが、日本では神経科学とかバイオメカニクスなどの、いわゆる基礎研究系に基づいたリハビリを、アイデア勝負で展開しているところが大きいのです。
ところが、世界では全く違っており、エビデンスに基づき、「こういう条件でこういう風にリハビリを行えば、こんな風に良くなった」というデータをもとにリハビリを進めていました。

次第に、日本の脳卒中患者様は、海外標準のリハビリを受けられないことによって損失を被っているのではないかと考えるようになったのです。

日本では、発症から六ヵ月以降の慢性期になると、リハビリでは良くならないと言われていますが、海外の脳卒中のエビデンスでは、その段階でもリハビリで良くなるというデータがたくさんあり、実際にデータを紐解いていくと、上肢については、週5回、1回あたり60分で、1~2ヵ月間、リハビリを行って良くなっているデータがほとんどだったのです。
しかし、日本の医療保険ではリハビリの上限が制度上、定められています。この制約によって、多くの場合、外来リハビリは週2回まで。介護保険では、マンツーマンのリハビリを受けられる訪問看護リハビリでは週3回40分までの範囲の中で行われます。

つまり、構造上、患者様の状態が良くなるようなリハビリが受けられない状態なのです。
保険制度というハード面、理学療法士の思考というソフト面ともに、患者様が良くならない状況を作り出してしまっているという課題を感じました。

この課題を解消するために、BRAINを設立しました。

設立されてからも、ご苦労はありましたか?

針谷先生:ええ、一番の問題は、日本では「リハビリは病院で受けるもの」というのが一般常識で、当院のような保険外のリハビリサービスを選んでくださる方が、まだそんなに多くないことです。

今でこそ、多少、広まってきているように思いますが、私が独立した5年前では、認知自体はされていたものの、第一選択になるような状況ではありませんでした。
安定した運営ができるのかっていうところは、不安要素でしたね。
でも、その中でしっかり結果を出すことで、患者様に信頼いただき、現在につながってきたのだと思います。

重度運動障害の手指のリハビリに、新しい選択肢ができた

実際にBMIを使用したリハビリを行ってみて、従来のアプローチと比べて、違いをどのように感じましたか?

針谷先生:2点あると考えています。

1点目が、脳の状態を可視化しながらリハビリを進められるという点。
従来は、手の動かし方に関してリハビリを提供する際に、運動イメージ(メンタルプラクティス)で行うしかなかったのですが、その場合、セラピストが「頭の中でこの筋肉が動く感じや、手を動かす感じをイメージしてください」と伝え、患者様が「イメージできました」と答え、「じゃあ、続けてください」という流れでやり取りが行われます。

ただ、本当にイメージができているのかどうか、正しく脳活動が起こっているのかどうかが全く見えない状況でした。
セラピストも患者様も、お互いにふわっとした状態で進めているのが現状だったのです。

「LIFESCAPES BMI」なら、これを脳波で確認できるので、うまく脳波が起こっていることを、お互いに確認しながらリハビリを進められるところが大きな違いだと思います。

もう1点は、重度運動障害の患者様に対して指の動きを出していくためのリハビリというと、今までは選択肢がほとんどありませんでした。
肩や肘については、動きが良くなっていく部分がありましたが、指先となると、電気刺激か川平法(促通反復療法)、ミラーセラピーくらいしかありませんでした。
「LIFESCAPES BMI」があることで、手指の伸展が出てくる患者様がいらっしゃるので、新しい選択肢をいただけたと感じています。

「LIFESCAPES BMI」を活用したリハビリに対する患者様の反応で印象に残っているエピソードはありますか?

針谷先生:発症から5年が経過された脳梗塞の患者さんで、「LIFESCAPES BMI」でのトレーニングをI5回実施した時点で、手指の伸展が出ました。
患者様も非常に喜ばれていました。
もし、「LIFESCAPES BMI」がなければ、長期間、電気刺激などを行うしか方法がなかっただろうと思います。

技術的な操作や運用において不安や難しさはありましたか?

針谷先生:装着、セッティングする部分で、「正しくセッティングできているか?」という不安はありましたが、LIFESCAPES社に詳しく教えていただいていたので、解決しました。

もう1点、脳波の上がり方やマップのカラーの解釈の仕方が難しいと感じていましたが、オンラインで教えていただいて解決しました。
充実したサポートで、本当にありがたいなと感じています。

日本全国でエビデンスに基づくリハビリを受けられる環境づくりに貢献したい

今後、BRAINをどんなクリニックにしていきたいとお考えですか?

針谷先生:まずは、提供するリハビリサービスの質をさらに高めていきたいと考えています。その一環として「LIFESCAPES BMI」を導入しましたが、今後はロボットアシストトレーニングをはじめ、エビデンスに基づいた機器を順次取り入れていきたいと思っています。
より効果が確立されたリハビリを届けられるよう、設備や体制を着実に整えていくことが目標です。

もう一点は、将来的に日本全国でエビデンスに基づくリハビリが普通に受けられるような社会になってほしいという願いがあり、これを実現するために、セミナー事業としてセラピストの教育を行いたいですね。
今後施設を増やしていくことも、その手段の一つだと考えています。

ありがとうございました。