<LIFESCAPES 医療用BMI(手指タイプ)>の製品情報

BMIとは、なんですか?

脳(Brain, B)と機械(Machine, M)を連動させる技術(Interface, I)の総称です。

テレパシーやサイボーグの実現だけでなく、病気やけがで失ってしまった脳機能の回復、アスリートやミュージシャンの能力向上、メンタルヘルスの改善など、私たちのこれからの暮らしを変えるテクノロジーとして注目されています(*1)。

*Technology of the Year 2023, Nature Electronics (2023).

製品の仕組みを教えてください。

装着者の頭皮表面から生体信号をピックアップし、麻痺した手を開こうと意図したときの反応が検出されたタイミングで電動装具が駆動し、運動がアシストされます。アシストの様子は、前腕部への電気刺激としても装着者に伝えられます。

装置を装着した状態で、手の開閉運動を繰り返し訓練することで、運動のしかたを身につけていただくことを目指しています。

LIFESCAPES社の製品には、日本国内の薬機法に基づいて医療機器認証を受けた医療機関向け製品<LIFESCAPES 医療用BMI(手指タイプ)>と、介護施設等における機能訓練で広くお使いいただける製品<LIFESCAPES 機能訓練用BMI(手指タイプ)>があります。用途に応じてお選びください。

どんな疾患、症状が対象ですか?

脳卒中片麻痺のアプローチが難しい重度の手指麻痺から、ぎこちなさが残る中等度から軽度の症状まで広くお使いいただけます。

<LIFESCAPES 医療用BMI(手指タイプ)>では、脳卒中および脊髄損傷が運動量増加機器加算の対象です。

本製品は、薬事上の適応疾患の制限はありません。医師の判断があれば、そのほかの疾患にも広くお使いいただけます。

学術研究では、脳性麻痺、頭部外傷、神経難病に対しても、BMIによって残存している神経筋系機能の自己調節をうながすことで、運動症状の緩和や改善につながると期待されています。

参考文献

  • 脳性麻痺について:Kirton A. A Moral Imperative to Advance Brain-Computer Interfaces for Children With Neurological Disability. JAMA Pediatr. 2023 Aug 1;177(8):751-752. doi: 10.1001/jamapediatrics.2023.1744.
  • 頭部外傷について:Pichiorri F & Mattia D. Brain-computer interfaces in neurologic rehabilitation practice. Handb Clin Neurol. 2020:168:101-116. doi: 10.1016/B978-0-444-63934-9.00009-3.
  • 神経難病(局所性ジストニア)について:Simonyan K et al. Brain-Computer Interfaces for Treatment of Focal Dystonia. Mov Disord. 2022 Sep;37(9):1798-1802. doi: 10.1002/mds.29178.

装着者自身が運動を意図する必要があるため、高次機能障害が強い場合は適応が難しい場合があります。詳しくは弊社までお尋ねください。

BMIを使うと、どのような改善効果が期待できますか?

手指の動きの改善(伸展、屈曲)、随意筋電図上の所見の改善が期待できます。

随意筋電図上の所見に改善が見られた場合は、筋電図トリガ式のロボットや筋電図トリガ式の電気刺激装置を使った訓練に移行して、更なる機能改善を目指すことができます。

痙縮や共収縮によるぎこちなさの改善や、手指の動きの改善にともなって近位部(肩、肘)が改善した報告があります。(詳しくは、販売先医療機関での本品を利用した学会発表の内容をご覧ください。(学会発表・論文のリストはこちら)

BMIを使っても治らない患者さんはいますか?

弊社創業前に大学試作品を用いた臨床研究では、適応と判断された方の約3割に、十分な機能改善がみられませんでした(Shindo et al. J Rehabil Med 2011; Kawakami et al. Restor Neurol Neurosci 2014)。

弊社製品を用いた臨床研究(十勝リハビリテーションセンター)でも、随意筋電図上の所見の改善に到達しなかった症例が複数あることが報告されています。

ただし、訓練量の調整、併用訓練の使用、手技の向上などによって、今後の治療成績は改善する場合があります。

どのような訓練スケジュールがよいですか?

脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)に引用されているレベル1論文(Kruse A et al. BMC Neurol 2020)では、「週2-3回の介入を3〜6週間
継続するプロトコルが有効」とあります。

弊社製品を用いた国内医療機関から学術報告されているプロトコルでは、「毎日40分(2単位)のBMI訓練」「ほかに標準的なOT, PT訓練を併用」「週5日間(月-金)を2または4週間」というものや、「外来で週1回(1回あたり40分)」というものがあります。(学会発表・論文のリストはこちら)

ほかのリハビリ訓練と、どのように組み合わせれば良いですか?

随意筋電図の反応が乏しい方にお使いいただき、随意筋電図上の所見に改善が見られた場合は、筋電図トリガ式のロボットや筋電図トリガ式の電気刺激装置を使った訓練に移行して、更なる機能改善を目指す「ステップアップ訓練」がおすすめです(Kawakami et al. Restor Neurol Neurosci 2016)。

屈筋群の痙縮が強い場合には、神経ブロックや装具療法によるプレ・コンディショニングをご検討ください。

経頭蓋磁気刺激法によるニューロモジュレーションとの併用も、効果が期待できます。(Sánchez Cuesta et al. J Rehabil Med 2024)

すぐに使いこなせるようになれるか不安です。購入後も製品の使い方サポートは受けられますか?

弊社では、BMIの臨床研究に長年携わってきたスタッフによる院内ハンズオンセミナー(約90分)を承っております。その後も、テレビ会議システムを使った訓練中の手技確認や、メールを通じた相談を随時受け付けています。

ほとんどの場合、1回のセミナー、2〜3回の手技確認後には、独力でBMIを運用できるようになります。

LIFESCAPES社が販売する製品の品質、有効性、安全性に関する情報を教えてください。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」において、能動型展伸・屈伸回転運動装置としての医療機器認証を受けており、品質、有効性、安全性が確保されています(認証番号:306AABZX00021000)。

認証前の試作品を用いた臨床試験でも、 ICH E2A ガイドラインに基づく「重篤な有害事象」「中程度の有害事象」の発生は報告されていません。

「軽度」と判定された有害事象については、電極接触部の赤み、痒み、痛みの発生が両群(実験群、対照群)で少数例報告されていますが、こうした電極の接触による皮膚のトラブルは一般に「絆創膏を体に貼ったときに起こることと同程度」とされています(ブレイン・テック エビデンスブック)。

試作品を用いた臨床試験の結果は、こちらからご覧いただけます。
Mizuno K et al. MedRxiv (2024)
https://doi.org/10.1101/2024.06.11.24308782

BMIリハビリテーション全般についての学術情報

国内外で発表されている有効性や安全性に関するエビデンスには、どのようなものがありますか?

脳卒中治療ガイドライン2021、同 改訂2023に収載されたシステマチック・レビュー5件では、それぞれ10件以上の臨床試験(100症例以上の結果)が解析されています。BMI技術の有効性、安全性に関する報告は、以下のとおりです。

慢性期でも亜急性期でも、BCI群が対照群よりも有意に改善する。

  • [改訂2023] Kruse A, Suica Z, Taeymans J, et al. Effect of brain-computer interface training based on non-invasive electroencephalography using motor imagery on functional recovery after stroke – a systematic review and meta-analysis. BMC Neurology 2020; 20: 385.(レベル1)
  • [2021] Monge-Pereira E, Ibanez-Pereda J, Alguacil-Diego IM, et al. Use of electroencephalography brain-computer interface systems as a rehabilitative approach for upper limb function after a stroke: A systematic review. PM R 2017; 9: 918-932.(レベル2)
  • [2021] Cervera MA, Soekadar SR, Ushiba J, et al. Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: a meta-analysis. Ann Clin Transl Neurol 2018; 5 651-663.(レベル2)

高強度のBCI訓練の場合に、亜急性期のほうが慢性期よりも効果量差がある。

  • [改訂2023] Kruse A, Suica Z, Taeymans J, et al. Effect of brain-computer interface training based on non-invasive electroencephalography using motor imagery on functional recovery after stroke – a systematic review and meta-analysis. BMC Neurology 2020; 20: 385.(レベル1)

取り込み基準を満たした9件のRCT 全235症例のなかで、1例、BMI使用後数時間経過後に中程度のてんかんによる脱落例が報告されている(BMIとの因果関係は不明)。

  • [2021] Cervera MA, Soekadar SR, Ushiba J, et al. Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: a meta-analysis. Ann Clin Transl Neurol 2018; 5 651-663.(レベル2)

運動イメージ療法とは違うのですか?

運動イメージをするだけでは、脳活動の質を担保することが難しい場合があります。

まひが強い場合に運動イメージの質を下げてしまう5つの要因(Raghavan P. Phys Med Rehabil Clin N Am 2015; Favre et al. Stroke 2014; Ward NS et al. Brain 2003)

  • そもそも運動のしかたを忘れてしまっている(Forgetting)
  • 脳活動が弱すぎる(Weakness)
  • 脳活動が過剰(Exaggeration)
  • 適切な脳活動パターンではない(Mal-Adaptation)
  • 脳活動が安定しない(Fluctuation)

一方、BMIでは、運動イメージ中に適切な反応が検出されたときだけ電動装具が駆動しますので、運動イメージの質、脳活動の質が担保され、より効果的な訓練効果が期待できます。

ロボットを使った他動訓練とは違うのですか?

ロボットからの他動的な感覚入力を受動的に受けるのではなく、BMI装着者自身が手を能動的に動かそうとしたときにロボットが動き出します。適切な反応が検出されたときだけ電動装具が駆動することで、「オペラント条件付け・強化学習」等を通じた、より効果的な訓練効果の発現が期待されます。

「筋電図トリガ式のロボット」や「筋電図トリガ式の電気刺激装置」との違いを教えてください。

随意筋電図の反応が乏しくて、筋電図の反応に基づいて駆動する電気刺激装置やロボットが適応外となるような重度症例の方にも、BMIを利用できる点が大きな違いです。(Kawakami et al. Restor Neurol Neurosci 2016)

BMI訓練の結果、随意筋電図上の所見に改善が見られた場合は、筋電図トリガ式のロボットや筋電図トリガ式の電気刺激装置を使った訓練に移行して、更なる機能改善を目指すことができます。

また、随意筋電図の反応があったとしても、こわばりがあり、ぎこちなさが残っていたり、動かしているうちに動きが悪くなってきたりするような場合には、BMI訓練のほうが向いている場合があります。単に力を込める訓練としてだけでなく、「体からりきみを抜く」訓練にもなっている点が、BMIの大きな特長です(Shindo et al. J Rehabil Med 2011)。