北海道最大規模の回復期リハビリテーション病床を有する「社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター」様では、「革新に満ちた医療への挑戦と新たなる組織価値の創造」という理念のもと、ロボットや電気刺激装置など、最先端技術を活用したリハビリテーションに取り組まれています。
同センターでは2023年9月に全国の民間医療機関に先駆けて「機能訓練用BMI」(以下、LIFESCAPES BMI)を日本で初めて導入しました。
今回は、同センターの「先進リハビリテーション推進室」で「LIFESCAPES BMI」の利用促進を担当する高橋先生、荒先生に、実際の活用方法や効果について、お話を伺いました。
※文中、BMIについては、概念は「BMI」、当社製品は「LIFESCAPES BMI」と表記しております。
【お客様のご紹介】
社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンターは、2013年11月1日に北斗病院から199床を分床し、帯広市稲田の地に開院。
“病院”ではなく“センター”という名称を掲げているのは、十勝をはじめとする道東地域においての急性期治療を終えた患者様が、自宅や社会へ復帰できるよう、最適なリハビリテーションを提供するという同センターの使命を込めているからだといいます。
開院以降、脳神経疾患や運動器疾患、廃用症候群などの患者様に対し、回復期リハビリテーションから在宅復帰後の訪問リハビリテーションに至るまで、シームレスな支援を提供されています。
【導入】メールやWebカメラなどを通してリアルタイムでサポート受け、イレギュラーな波形にも対応できるように
―導入時や導入直後に、技術的な操作や運用において、不安や難しさを感じることはありましたか?
荒先生:BMIという技術自体が、今までのリハビリ方法とはガラッと変わるので、脳波の判読方法や、「そもそもBMIがどんな患者様に効くのか?」などの知識がない状態からのスタートでした。
「LIFESCAPES BMI」の操作方法から注意点、訓練中の患者さんへどんな声がけをすべきかなど、不安はありましたが、LIFESCAPESから、メールやWebカメラなどを通してリアルタイムでサポート受けることで解決しました。何度か実際に使っていくうちに、慣れてコツが掴めてきたということもあります。
たとえば、導入時にLIFESCAPESからのレクチャーを受けたものの、実際に患者様に対して使用してみると、デモンストレーションでセラピストたちが試した時とは全く異なる脳波の波形が出たりなど、想定外のデータが出ることも多く、とまどうこともありました。
LIFESCAPESからのアドバイスにより、患者様が力んでしまって肩に力が入っているからだとわかり、現在ではイレギュラーな波形が現れても、対応できるようになりました。
【成果・効果】重度上肢麻痺患者さんのリハビリ方法に悩む臨床現場で、改善のきっかけになる機器
―実際に「LIFESCAPES BMI」を導入後、どのようにご利用されていますか?
:導入前は、特に重度運動麻痺の患者様に対して、患者様ご自身の手の関節運動が起こらないため、脳からの命令が届いているかどうかの判断がわかりにくかったんです。そのため、セラピストが触診をして、筋肉に動きが出ているかどうかを確認するしか方法がありませんでした。
従来の方法として、運動イメージなどの練習方法もありますが、患者さんに聞いてみないと、できたかどうかを確認できないものでした。
また、患者様自身が諦めてしまったり、代償動作を強めてしまったりなどの問題点もありました。
さらに、セラピスト側もなかなか患者様のささいな機能回復に気づけず、双方のモチベーション低下につながっていました。
「LIFESCAPES BMI」を導入後は、フィードバックを得られるため、そのリハビリ方法が実際に練習になったのかどうかを判断できるようになりました。
セラピストも、その練習の難易度がその患者様にとって適正なのかどうかがわかるようになりました。患者様がどこまでできたのかを把握できるため、次の治療の方針も立てられるようになったのです。
―BMIを使ったリハビリに対する患者様の反応で、印象に残っているエピソードはありますか?
荒先生:手指伸展の関節運動が起こらなかった患者さんが、「LIFESCAPES BMI」を使ったリハビリを実施直後に、わずかながら自身の指が動いているのを見て、とても喜んでいました。「私の指は頑張っていたんだ」と話された場面は印象的でしたね。
ほかにも、指は動かず、筋活動が検知できなくても、脳からの命令は出ているのだということがわかって喜ぶ患者様もいらっしゃいます。患者様によって、喜ぶポイントは少しずつ異なりますが、似たような体験をされた患者様は多いと感じています。
―「LIFESCAPES BMI」を導入後、具体的にどのような効果がありましたか?
高橋先生:BMI装置導入前の患者さんの上肢運動機能評価(FMA上肢項目)の定期評価と比較すると、1ヵ月間のFMA上肢運動合計やFMA手指項目が、BMI練習を2週間行った患者さんの方が改善したという結果がありました。
また、BMI導入前では手指伸展運動ができずにADLでの上肢使用が難渋していた患者様がいらっしゃいましたが、BMI実施後に筋電駆動型電気刺激装置を併用した上肢機能練習、装具のみ併用してADLへの活用と、BMI練習で生じた変化から段階的に次の練習に移行することができました。その結果、ADL(タオルを畳む動作など)で汎化が見られました。
この成果については、プレプリントになりますが、論文での発表も行っています。
荒先生:従来の方法では、最重症の患者様の急性期でアプローチできる方法がありませんでした。そういう意味で、「LIFESCAPES BMI」は、痒いところに手がとどく機器だと思います。
できることがないと、患者様ご自身もあきらめてしまいます。
しかし、「LIFESCAPES BMI」があれば、患者さんが期待を持てます。そして、少しでも改善すれば、「やって良かった」と感じ、それが次の練習の意欲にもつながります。そういった成功体験が何例も確認できています。
―他院のスタッフに「LIFESCAPES BMI」を勧めるとしたら、どのような点を伝えたいですか?
高橋先生:臨床現場では、重度上肢麻痺患者さんのリハビリ方法に悩んでいるところが多いと思います。「LIFESCAPES BMI」は、臨床現場で治療に悩む重度上肢麻痺患者さんの改善のきっかけになると思います。
特に、運動イメージなどエビデンスとして良い手法も実際に患者さんがイメージできているのかなど悩んでいた部分がわかるため、治療の幅が増えると考えています。
また、エビデンスのある良い手法だと言われていても、「実際にできているのか?」という評価に疑問を持つこともあると思います。その点でも「LIFESCAPES BMI」なら、リアルタイムで評価ができる点がセラピストとして治療の幅を広げてくれます。
―ありがとうございました。
社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンターの各種取り組みについては下記からご確認ください
社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンターHP
https://www.hokuto7.or.jp/hospital/rehacenter/top/